変化し続ける東京のストリートを行き交う「他人」に焦点を当てた作品。上野アメ横の立ち飲み居酒屋「魚草」のメニューにさりげなく書 かれた「酒とアート(1000円)」を注文すると、客は運ばれてきた酒 を片手に隠し小部屋へと案内される。そこでは、アメ横に足を運ぶ無名の 人たちの様々なストーリーが、音声や写真を通じて再生される。誰もいな い居酒屋より賑やかな酒場で酒を酌み交わしたい私たちは、名も知らぬ他 人を必要としている。スーツに身を包んだサラリーマン、夜勤明けの労働 者、アジアのどこかからやってきた観光客。言葉を交わすこともなく外見 だけ何気なく判断していた他人たちの物語に耳を傾けるとき、私たちが都 会の喧騒の中で見知らぬうちにとなりで酒を酌み交わしていた愛おしき 「他人」が形を帯びてくる。



